ナポリのフランチェスコさん

ここはナポリのヴォメロの丘へ行く登山鉄道のトレド通りの駅、ここからヴォメロの丘まであっという間です。

この日は明日、日本に帰るという最終日。あれが見れてない、あそこに行けてない、やっぱりあのお土産は買っておきたい、などとナポリに慣れて来て土地勘も付いて来て欲張って相当歩き回りました。

ここも夜の8時。最後の最後に行きました。ですからサン・テルモ城は閉まっていて次回に、ということで、、、

さて、この日のハイライトはフランチェスコとの出会い、、、

この日、動線悪く動き回ったことの一番大きな要因は、あてにしていたお土産はさんが行ってみたら開いてない💦

シャッターの降りたお店の前でわたくしは得意?のイタリア語で道行く人に尋ねると、この店は午後3時に開店する、というではないですか、、

はぁ?でも困難にぶち当たるとそれを克服しようとへんに元気が出るわたくし、、、

大丈夫、3時までにあれとこれと済ませてまた来よう、と娘を励まして移動。

いろいろ済ませてまた、そのお店に戻ろうか、という時にバスを使おうと娘と相談がまとまって、、、

ナポリ初日にカポティモンティ美術館に行く時にバスを使って順調で、ナポリのバスにちょっと信頼感を持っていたこともあり、同じバス停の反対側でここからバスで行かない?

行き先の表示を見ると、目的の場所に直には行きませんが、ちょっと手前で降りれば歩いてすぐ、そんなことも数日ナポリにいてわかって来ていたので、ベンチに座って待つことにしたのですが、

そこで先に待っていてこの25番バスはどこそこ行きますよね、とお尋ねしてお話しするようになったフランチェスコさんとご縁することとなりました。

イタリア男、ましてやナポリ男は伊達で粋、というのはそれなりの人、フランチェスコさんはスーツもシャツもネクタイもちょっとくたびれて、カバンを携えた実直な感じの小柄な紳士。

わたくしどもがイタリア語でお尋ねしたことに感じ入ってくださったようで、そこからかれこれ30分、イタリア語でお話しすることとなりました。

わたくしと娘が日本語で何か申しますと、ちゃんとイタリア語で言って、とおっしゃいます。

イタリア語でうまく言えなくて娘が英語で言い直すと、ちゃんとイタリア語で言って、とおっしゃいまして、なかなかその辺の誘導が上手、この方はイタリア語の教師なのかな、と思いました。

娘のことをモデルさんみたいに綺麗だ、とおっしゃいまして、そんなこと、いくらわたくしが親バカでも娘を褒めときゃこの婆さんの機嫌がいい、との社交辞令なことぐらい百も承知、ここで日本人らしく、とんでもありません、的な謙遜のイタリア語が言えたら、と思いましたが言えないので、そこはジェスチャーと表情で精一杯表現しました。

この方はすごいですよ、わたくしがちょっと先にイタリア語を勉強していて、で娘もそれに続いて少しやっていてイタリア語はわたくしのほうが牽引している、というその関係もちゃんと見抜いていらっしゃいます。

娘の仕事は何かお尋ねで、わたくしが答えますとブラーバとおっしゃって、息子さんは弁護士を目指して大学で勉強しているとのことで、お返しにブラーボとわたしも何回か申しました。

ナポリ出身でカポティモンティ美術館の近所にお住まいとのことで、美術館には初日に行ったこととカラヴァッジォのことなど申してもあまり興味はないようで、ご近所でも見てない人は見てないよな、と思いました。

バスは期待を裏切ってなかなか来ません。フランチェスコさんも同じバスに乗られるとのことですが、実はわたくしはフランチェスコさんとのイタリア語での会話に限界でした。

とりあえずボロは出してない感じで高評価、このレベルをいつ来るとも知れないバスを待って続けるのは集中力、気力的に限界を感じていて、、で娘の英語にバトンするとフランチェスコさんはとぼけているのか英語は不得意なのか受け付けてくださいません。

で、わたくしは明日ナポリを発ち、きょうこなさなくてはいけない予定がまだあるので、頑張って歩いていく、とフランチェスコさんに宣言しました。

実際歩きましたしね。フランチェスコさんはとっても残念がってくださり、、、、

いやあ、わたしも残念だし、バス停にひとり残ったフランチェスコさんはちょっと寂しいだろうな、とも思いましたが、せめて娘の英語を許してくださったらわたしは休めたのに、、、、

わたくしは「まいにちイタリア語」で覚えたばかりの、楽しみました、残念です、と申しますと、娘はわたしでなくわたしたちでしょ、と言い換えました。

イタリア語は動詞によって主語が変わり、そこでわたしたちは楽しんだし残念、という複数形にした娘はなかなか気が利いて可愛らしいですね、さすがです。

お話しの途中フランチェスコさんと娘のツーショットの写真を撮る、と提案しますとフランチェスコさんは、とんでもないこんな綺麗な若い人と、と遠慮されて、でもわたくしがさらに提案しますと、旅の思い出に欲しいという気持ちを汲んでくださったのか写真に収まってくださいました。

それだって一枚だけ、もう一枚撮る?とか今のはどう撮れてる?みたいなそんなそぶりは全くなく、遊び人風でなくても、こんな控えめなところもイタリア人のステキな感性じゃないかしら?

弁護士を目指している息子さんには是非弁護士さんになっていただいてフランチェスコさんを喜ばせて欲しいなと思います。