カラヴァッジォの本当のお話しの面白さ

この本のことは書いておかなくちゃと思ってました。

カラヴァッジォの絵がアイルランドの修道院の食堂にかけられていて、改修工事をすることになりついでにその絵も修復に出したらなんとカラヴァッジォだった、という本当にあったお話です。

まず冒頭に、ローマの美術史専攻の若き女流学者がそういう絵が存在していて違う人が描いたことになっているが、それはカラヴァッジォの作品で、今はイギリスのどこかにあるはずだ、と調べ上げていく過程が書かれています。

400年も500年も昔の誰も見たことがないけれども見た、という人の記録がある、あるいは模写は見たという記録を手掛かりに見たこともない絵を探す、しかも来歴の証拠がなければ証明されないのでなかなか想像するに大変なことではあります。

今ではどの絵画にも世界中の人が認識できる名前が付いていますが、昔は作者、その絵の大きさやら額縁の特徴やら、絵の中に何人の人がいて、どんな様子が描かれているか、といった記録からあの誰それが見たというあの絵に違いない、とか判断するわけです。

そして依頼主が画家にいくら払ったか、その支払い伝票のようなものも大切な証拠となります。

この金額なら安すぎるので作者は違う人ではないか、とかなんとか。全額でなく前金としての一部だから安いんだ、とか、、、、、

結局修道院から永久貸与されてダブリンの国立美術館に収蔵されたこのカラヴァッジォの絵は、最初オランダのちがう画家が描いたと間違って伝わっていました。

転売されたり寄付されたり相続されたり競売にかけられたり絵によって色々な運命を辿り来歴はそれぞれですが、その時々でどのくらいきちんとその経過を記録されているかで絵の運命は決まってしまいますね。

時代によってもてはやされて高値がつく画家が、ある時代では見向きもされなかったり、、、色々な要因を考慮しての真贋ですからこれは学問としても遠大で面白そうだなと思います。

このダブリンの国立美術館は大した作品もない、と控えめに書かれていますが、調べてみますとそんなことはなく、他にもいいなあと思う作品がいくつもありますし、このカラヴァッジォの「キリストの捕縛」はキリストを逮捕する警官の黒い甲冑の光具合が素晴らしく是非見に行きたいなと思ってます。

この本は実は何年も前に一度読んでいて、娘とロンドンに行く計画を立てた時に、ダブリンにも行けないか?と提案していたのですが、結局その時のロンドン行きは頓挫してまだ行ってません。

長女は結婚したし、今度は息子を巻き込んで行きたいかな?この黒い甲冑のテカリ具合は息子も感心するはずです。

作者はジョナサン・ハーと言ってノンフィクション作家です。ジョン・トラボルタが弁護士役で出た映画の原作もこの人だったように思うのですが、何か社会派的な告発するような映画だったように思います。

この本は家族みんなに読んで欲しいです。わたくしなどはその絵が好きか嫌いか、印象に残るか程度のことで見させてくれれば十分ですが、学者の絵画に対する執念とかこだわりにはちょっと感動ものです。

孫娘、美術史やらないかな?なんて思いますね。いけないいけない、婆さんのエゴだ😱