カラヴァッジョ「法悦のマグダラのマリア」

上野の国立西洋美術館で、「カラヴァッジョ展」が開催されていて観てきました。今年は日伊国交樹立150年で、イタリアにあるカラヴァッジョの作品11点と、彼の影響を受けた画家の作品を合わせて51点の展示。このくらいだと疲れずに観ることができます。

カラヴァッジョはイタリアが誇る天才で、教会などに安置されている移動できない作品も多いため、しかも一点搬出するだけでも大変な画家なので、この数は世界有数の展覧会です。

写実的で、ドラマチックな明暗の取り方などが特徴で、下絵は描かないとのことで、とにかく絵の上手な人という印象です。

イエスのお母さんのマリアは、普通は美しく描かれるのに、カラヴァッジョは、皺くちゃのやり手のおばあさんのように描いたりします。

今回の目玉である、「法悦のマグダラのマリア」は2014年に、あるお屋敷から見つかり、専門家に真筆と鑑定されたもので、娼婦だったマリアはイエスと出会い、悔悛して、一番の女弟子になったという人ですが、カラヴァッジョの絵のモデルは、大抵馴染みの娼婦や男性なら不良の遊び仲間だったりするようですが、なんとこの絵のマリアは妊婦のようで、写実的と言ってもそこはどうとでも描けたと思うのですが、、

しばらく創作に打ち込んで、出来上がると、刀を差して盛り場に出かけて、何日も飲んだり暴れたり、なんども裁判沙汰や投獄されたりしていて。今回も裁判での証言やら、大家さんとの入居の時の、契約の取り決めやらの、正式な記録が展示されていて、面白く読みました。

この「法悦のマグダラのマリア」は個人所蔵で、この度、世界で初めて、本国イタリアよりも先に日本で公開とのことで、他にも個人所蔵のものがいくつか来ており、そういうものは、美術館にいつか行って観れるものではないので、それを見るだけでも価値はあります。

裁判の記録の一つですが、カルチョーフィを油で揚げたもの4つとバターで炒めたもの4つを注文して、8つ運ばれてきたうちの、どれがバターで炒めたものか聞くと、給仕した人が、匂いでわかる、と答えたことに腹を立てて、カラヴァッジョがその人の顔に皿を投げつけて、訴えられた、というものがありました。かように気性の激しい人、ということで、普段の行いが悪いから裁判になったんでしょうが、わたしはその給仕した人の態度もよろしくないと思いますけども。
そんなことをしょっちゅうしていたので、不良同士暴れて、とうとう殺人までしてしまい逃亡生活が始まります。

それでもいく先々でカラヴァッジョに絵を描いて欲しいパトロンがいて守られていきます。

最後は恩赦となるのですが、その知らせも行き違いとなり、知らない本人が逆に恩赦を求めてローマにもどる途中に、真夏の炎天下に野垂れ死します。

恩赦をお願いするときのお土産に、三つの作品を最後まで携行していて、行方知れずになっていた、その時の一枚が、今回見つかった「法悦のマグダラのマリア」だそうです。

暴れん坊で人を殺めたのに、自分の命は惜しかったんだな、というところに哀れを感じます。美術に興味がなくても、本物は観ておくのもいいかな、と思います。

トップの看板の作品はフィレンツェのウィフィチィ美術館の「バッカス」で、バッカスはローマ神話のお酒の神様。赤い顔をしていますね、